ブロックを「動かす」時代へ:物理×デジタル融合の知財戦略
世界中で世代を超えて愛され続けるLEGO®ブロックは、単なる物理的な積み木ではない 。LEGOグループは、従来のブロック玩具の枠を超え、技術特許や知的財産(IP)を巧みに活用することで、デジタル領域での体験を拡張し、遊びの未来を創造している 。彼らの知財戦略は、物理的なブロックとデジタルの世界を連動させる独自のシステムや制御方法を保護することに重点を置いているのだ 。
この戦略の具体例として、AR(拡張現実)やセンサー制御技術がある 。例えば、組み立てたLEGO®モデルに特殊なマーカー部材を付加し、スマートフォンのカメラ映像からそのマーカーを認識して、コンピュータ生成の仮想映像を現実のブロックに重ねて表示する技術が示されている 。これにより、物理ブロックの組み立て遊びに、デジタルキャラクターとのインタラクションやストーリー展開といった新たな要素が加わる 。また、動きを検知するセンサーとマーカー読み取り機能を持つ電子玩具については、遊びの開始/終了をトリガーに動きやマーカー情報を解析してスコアを算出する仕組みが記載されている 。カメラで撮影した配置済み玩具群を認識し、その情報から音楽を自動生成し再生するインタラクティブ音楽システムも開示されている 。これらの技術特許を通じ、LEGOは物理世界のブロックと連動するAR/センサー機能を標準化し、創造的な遊びの可能性を拡大しているのだ 。
その他の知財出願でも、電子制御やセンサー連携に関する内容が多い 。例えば、複数の電子モジュール間で非接触的に位置・向きを検出する技術や、光学センサーで認識物の位置を判定しLEDで通知するセンサーモジュールなどがある 。これらは、物理ブロックに組み込まれることで、ブロック遊びにデジタル的な反応や情報表示を付与する基盤となる 。さらに、形状が変形できるブロック要素や、リモコン走行車両モデルで組み立て操作を検知するインタラクションセンサー、タグ部品が接続された機能ブロックに設定データを送る構造、無線タグで複数の機能ブロックをグループ化する仕組みなど、LEGOの特許戦略は、物理ブロックの機能性を拡張する多岐にわたる技術を保護しているのだ 。
バーチャル世界への拡張:ゲーム・アプリ・メタバース戦略とIP
LEGOグループの知財戦略は、物理的なブロックの拡張に留まらない 。彼らは、ゲームやアプリを通じて、自社IPをデジタル空間へと積極的に展開し、子ども向けの安全なメタバース空間の構築にも着手している 。2022年4月には、人気ゲームエンジンを提供するEpic Gamesと提携し、Unreal Engineを用いた仮想世界の構築を共同で進めることを発表した 。
この提携から生まれた具体例として、人気ゲーム「Fortnite」内に登場するLEGO®専用ワールド「LEGO Fortnite」がある 。このゲームでは、物理的なLEGO®のプレイセットに付属する説明書のQRコードを読み取ると、Fortniteゲーム内で特別な衣装などのデジタルアイテムを入手できるという、物理とデジタルが連動する新しい遊びの仕組みが導入された 。また、EAのスマートフォンゲーム『The Sims FreePlay』では、LEGO DOTSシリーズとのコラボレーションイベントが開催され、プレイヤーがゲーム内で資源を集めることで、LEGO DOTSデコレーションアイテムをアンロックできる企画が実施された 。さらに2023年にはMeta Quest向けにVRゲーム『LEGO® Bricktales VR』が登場し、実際のLEGO®ブロックで組まれたミニチュア世界を混合現実(MR)で操作する体験が提供された 。このように、LEGOはゲームやアプリ、メタバースといったデジタルプラットフォームを通じて、LEGOブランドと技術力を融合させた新たな遊びを創出しているのだ 。
ブランドと物語を護る知財:LEGOの多層的IPエコシステム
LEGOグループの知財戦略は、その強力なブランドとキャラクターを守り、世界観を拡張するためにも多層的に展開されている 。公式には「LEGO®」「DUPLO®」「NINJAGO®」といった主要ブランド名が登録商標として明確に保護されており、新しいテーマ名も継続的に商標登録を進めることで、ブランド資産を維持している 。例えば、2022年7月に出願され、2023年5月にアニメ新シリーズとして配信開始された「LEGO DREAMZzz™」は、ゲームソフトや映像作品等を含む広範な商標として保護され、新しい物語の世界観を支えている 。
また、著作権は、アニメシリーズや映画といったメディアコンテンツの制作において活用されている 。ファレル・ウィリアムスの生涯をレゴアニメで描く映画『Piece By Piece』が2024年11月公開されたことも報じられ、キャラクターやストーリーを通じたブランドの深化が進む 。このほか、ミニフィギュアやDUPLO、VIDIYO、MINDSTORMSといったキャラクターや商標を組み合わせたIP展開は継続的に行われている 。
直近5年でLEGOは、特許技術と自社IP(ブランド、キャラクター)を融合させ、フィジカルとデジタルを行き来する新たなファン体験を創出している 。AR/センサー特許によってブロック遊びの可能性を拡大し、ゲーム・アプリ・メタバース連携でデジタル版LEGO®ワールドを実現する一方、商標や著作権を活用したアニメ・映画コンテンツを通じて物語性も強化している 。これらの知財戦略により、LEGOは「組み立てるのはブロックだけじゃない」と言える多層的な遊びのエコシステムを築き、未来のエンターテインメント体験を創造し続けているのだ 。
参考URL
* [1] LEGO Group 公式サイト: https://www.lego.com/ja-jp/
* [2] AR対応トイ構築システム 特許 (US9827507B2) – Google Patents: https://patents.google.com/patent/US9827507B2/en
* [3] LEGO® Fortnite 公式情報 – Epic Games: https://www.epicgames.com/fortnite/ja/news/welcome-to-lego-fortnite
* [4] LEGO® DREAMZzz™ 公式サイト/ニュース: https://www.lego.com/ja-jp/themes/dreamzzz
* [5] 特許情報プラットフォーム J-PlatPat: https://www.j-platpat.inpit.go.jp/




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