三菱電機の知財戦略—標準化と共創で築く持続可能社会

 電機メーカーとして家電から宇宙まで幅広い分野で事業を展開し、電気工学、機械工学、化学などの分野を中心に約7万件の特許を保有する三菱電機。自社の技術を生かして持続可能な社会を実現し、自らも成長するため、知的財産戦略を「競争」から「共創」へとシフトすることを決断した。その具体的な取り組みについて、Japan Inovation Reviewに知財戦略のトップである曽我部靖志氏のインタビューが記載されている。

三菱電機の知財戦略:標準化と特許の連携で競争力を強化

 三菱電機は、持続可能な社会の実現に向けた知財戦略の一環として、技術の標準化と特許取得の連携を強化している。従来、同社では特許取得を知的財産センターが、標準化活動を各事業部門がそれぞれ独立して進めていた。しかし、こうした体制では、自社の強みを生かした世界標準の策定が困難であった。

 一方、海外の大手企業は、標準化の動向を注視しながら、その中核となる技術の特許を先行取得することで、市場における競争優位性を確立している。特に通信分野では、標準規格の策定と並行して特許戦略が進められ、「標準必須特許(SEP)」の取得が事業成長の鍵となっている。このようなグローバルな潮流に対応するため、三菱電機は標準化チームを知財戦略部内に統合し、標準化と特許の連携を強化する組織改革を実施した。

 また、近年の環境規制の強化にも対応する必要がある。特に欧州では、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに関する規制が進んでおり、企業は標準化の提案を進めながら、同時に関連特許を取得することで競争力を高めている。これに対し、日本企業の多くは規制が確定してから対策を講じる傾向があり、出遅れるリスクを抱えていた。

 この状況を踏まえ、三菱電機は「フロントローディング(前倒し対応)」の考え方を特許戦略にも適用し、規制が策定される前の段階から先回りして特許を取得する体制を整えつつある。知財部門の強化により、技術部門や研究所との連携が強まり、事業部門においても特許に対する意識が変化し始めている。

このように、三菱電機は標準化と特許の連携を軸に、グローバル市場での競争力向上を目指している。今後、技術と知財戦略の融合をさらに推進することで、持続可能な社会の実現に貢献していく方針だ。

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